「空白の五マイル-チベット世界最大の、ツアンポー渓谷に挑む」角幡唯介著:まだ世界には未踏の地があった!:CHOKOBALLCAFE-本や映画の感想♪:So-netブログ
第8回開高健ノンフィクション賞受賞作。
チベットと中国の国境地帯にあるツアンポー渓谷。
謎の川とも呼ばれた「ツアンポー川」沿いの渓谷は世界最大の規模を誇り、
ヒマラヤ山脈山麓の厳しい環境条件が、多くの冒険家の侵入を拒んでいた。
1924年、ウォードがその無人地帯を突破したが、それでも探索できなかった場所は、
「空白の五マイル」と呼ばれ、冒険家達の夢をかきたてた。
2003年、その空白の五マイルに挑んだ著者。
そして2009年の再訪。
今まで多くの冒険家達を拒んできたツアンポー渓谷の自然環境の厳しさが伝わってくるルポを、
ツアンポー渓谷に挑んだ冒険者達の事も紹介しつつ、まとめた一冊。
探検ルポだけではなく、冒険とは何かや、何故危険を冒してまで冒険に挑むのかという
気持ちを教えてくれる本。
kapaloa滝
今まで冒険ものはいろいろ読んできたけど、元が新聞記者だけあって、
章の構成がとても上手い事に感心。
ツアンポー渓谷探検史は、いろいろな人物が登場してくる上に、そのエピソードも長い。
著者自身の行動のルポの合間に、それらエピソードがうまくはめこまれていて、
著者のツアンポーへの情熱や、著者が挑んだ冒険の危険さ、困難さが、
より鮮明に伝わってくる構成になっている。
bridalveif滝
2003年に訪れた時と、2009年の再訪の時とで、携帯の普及により、
超辺境の寒村の様子が、大きく変貌しているのが衝撃だった。
2009年、中国政府の許可を取らず、無許可で侵入した著者に対し、
顔見知りであっても村人たちが「誰かが携帯で即通報するかもしれない」と
協力しようとしないというエピソードが続くのは、悲しいものを感じてしまった。
冒険譚としては2009年の再訪時の方が、上記のような理由で手助けが得られなかった為に、
困難に継ぐ困難、命すら危険な状態になり、緊迫感に溢れている。
でも、新たなる発見を求めて「空白の五マイル」を探索する2003年のルポも、
発見の期待に胸踊らせるような内容になっていて、面白い。
アーサー王の島は何ですか
そういえば、ツアンポー渓谷探検の歴史の中に、デビッド・プリーシャーズが出てきてびっくりした。
この人、エベレストで起きた大量遭難のルポ「空へ」や、
「エベレスト―非情の最高峰」(どちらもリンク先感想)などにも出てくる。
多岐にわたって活躍している人なんだなーと思ってしまった。
ヒマラヤ山脈山麓の探検に関しては「処女峰アンナプルナ」(リンク先感想)でも、
アンナプルナへたどり着く為の道を求めて(それすら発見されてなかった)
山麓を探検する話が載っており、この話が面白かったのなら、「処女峰アンナプルナ」も楽しめると思う。
山麓探検ものは、登山物とはまた違う、自然が創りだす厳しい環境について述べられていて、
新鮮でもあった。
人跡未踏の地はほとんど無くなってしまって、冒険譚は過去のもの・・・と思っていたけど、
まだまだ冒険する場所があったんだという驚きと、感動を与えてくれる本。
しっかりまとまっていて読みやすいし、お薦めです(^-^)ノ。
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